はじめに|「できるのにやらない」と感じていない?
臨床で、こんな場面はありませんか?
- 評価ではできている
- 機能的にも問題は少ない
- でも生活ではやらない
つい
「意欲の問題かな」
「もっと練習が必要かな」
と考えてしまいがちです。
自分も同じでした。
ですがMOHO(人間作業モデル)で考えるようになってから、
「できるのにできない理由」が見えるようになりました。
この記事では、
遂行能力の考え方と
臨床でどう関わるかまで解説します。
MOHOでいう「遂行能力」とは何か
MOHOでは、遂行能力を
- 客観的な能力(筋力・認知など)
- 主観的な遂行体験(できそう感)
の2つで捉えます。 (リハビリの世界)
👉 この「主観的体験」がポイントです。
「できる」と「できると思える」は別もの
臨床ではよく
- 機能的にはできる
- でも本人は「できない」と感じている
という状態があります。
このとき人は
👉 行動を選ばなくなります
なぜなら
「できそう」と感じる行動しか選ばないからです。 (リハビリの世界)
【症例】できるのにやらない患者さん
ある患者さんは
- 更衣は可能
- 動作も安定
にも関わらず、
常に介助を求める状態でした。
当初は「依存傾向」と考えていましたが、
よく話を聞くと
- 失敗経験が多い
- 自信がない
- 怖さがある
👉 「できる感覚」が低下している状態でした。
なぜ遂行体験は失われるのか
次のような経験が重なると
- 失敗が増える
- 手を出される
- 止められる
👉 「自分でできた」という感覚が減ります (リハビリの世界)
結果👇
- 任せられると不安
- 避ける
- 行動しない
では、どう関わるか?(ここが重要)
① 成功体験を意図的に作る
👉 小さくていい
例:
- ボタン1つだけ留める
- 上衣だけ自分でやる
👉 「できた」を増やす
② 介助を“引きすぎない”
よくあるのが👇
👉 手伝いすぎ問題
- 時間短縮
- 安全配慮
👉 これが
遂行体験を奪うことがある
③ 環境を調整する
評価室ではできるのに
生活でできない理由👇
- 物が多い
- 手順が複雑
- 注意が分散
👉 環境を変えるだけで変わることも多い
④ 「できる場面」を広げる
👉 一度できたことを別の場面でも
例:
- 訓練室 → 病室
- 病室 → 自宅
👉 一般化が重要
NGになりやすい関わり
- 「できるでしょ」と言う
- 無理にやらせる
- できないことを指摘する
👉 自信をさらに下げる可能性あり
まとめ
MOHOで遂行能力を見ると
- 能力不足ではなく
- 「体験の問題」として捉えられる
ようになります。
そして重要なのは
👉 できる能力ではなく、できる感覚を育てること
最後に
「できるのにできない」行動には、
必ず理由があります。
その背景を見ていくことが、
作業療法らしい関わりにつながると感じています。
※注意書き
本記事は、作業療法における一般的な理論的考え方を紹介することを目的としています。
個別の評価・治療・判断については、必ず担当の専門職と相談してください。
参考文献・参考資料
- 作業療法実践の理論
Gary Kielhofner(著), 山田孝(監訳).医学書院. - Kielhofner, G. (2008).
Model of Human Occupation: Theory and Application (4th ed.).
Lippincott Williams & Wilkins. - Kielhofner, G. (2017).
Model of Human Occupation: Theory and Application (5th ed.).
Wolters Kluwer.

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