はじめに|「意欲が低い」と決めつけていない?
臨床で、こんなふうに感じることはありませんか?
- 活動に誘っても反応が薄い
- 何を提案しても「いいです」と断られる
- ほとんどの時間をベッドで過ごしている
つい
「意欲が低い患者さん」
と捉えてしまいがちです。
自分も以前はそうでした。
ですがMOHO(人間作業モデル)で考えるようになってから、
「意欲が低い」という見方自体が変わりました。
この記事では、
意欲低下をどう捉えるか、そして
臨床でどう関わるかまで解説します。
MOHOで見る「意欲」とは何か
MOHOでは、意欲(意志)は次の3つで構成されます。
- 価値(大事だと思うこと)
- 興味(やりたいと思うこと)
- 有能感(できそうと思えるか)
👉 つまり
意欲は単純な“やる気”ではない
「意欲が低い」と見える理由
MOHOで考えると👇
👉 意欲が低いのではなく
👉 どこかの要素が崩れている状態
① 価値が見えなくなっている
- 何のためにやるのか分からない
- 意味を感じられない
② 興味が失われている
- 楽しみがない
- 過去の活動とつながらない
③ 有能感が低下している
- 失敗経験が多い
- 「どうせできない」と思っている
👉 このどれか、または複数が重なると
「意欲低下」と見える
【症例】「何もしたがらない」患者さん
ある患者さんは
- 活動にほとんど参加しない
- 声かけにも反応が薄い
- 日中は臥床が多い
という状態でした。
当初は「意欲低下」と考えていましたが、整理すると👇
- 役割を失っている(価値)
- 楽しみがない(興味)
- 失敗経験が多い(有能感)
👉 意欲がないのではなく、構造が崩れている状態でした。
では、どう関わるか?(ここが重要)
① 「意味」を取り戻す
👉 その人にとって大事なことを探す
例:
- 家族との役割
- 過去の生活
👉 「やる理由」を作る
② 興味につながる活動を使う
👉 リハビリではなく「その人の活動」
例:
- 趣味に近い作業
- 生活に近い動き
👉 「やらされる」から「やりたい」へ
③ 有能感を回復させる
👉 小さな成功体験を積む
例:
- 簡単な作業から始める
- 成功しやすい環境を作る
👉 「できるかも」を増やす
④ 環境を調整する
👉 行動しやすい状況を作る
- 声かけのタイミング
- 活動の流れ
- 周囲の関わり
NGになりやすい関わり
- 「頑張りましょう」と励ます
- 意欲を問題にする
- 無理に活動を増やす
👉 逆に負担になることも多い
まとめ
MOHOで意欲を見ると
- 意欲低下=やる気の問題ではない
- 意欲低下=構造の問題
と捉えられるようになります。
そして重要なのは
👉 意欲を上げるのではなく、行動できる状態を作ること
最後に
「意欲が低い」という言葉の裏には、
必ず理由があります。
その背景を丁寧に見ていくことが、
作業療法らしい関わりにつながると感じています。
※注意書き
本記事は、作業療法における一般的な理論的考え方を紹介することを目的としています。
個別の評価・治療・判断については、必ず担当の専門職と相談してください。
参考文献・参考資料
- 作業療法実践の理論
Gary Kielhofner(著), 山田孝(監訳).医学書院. - Kielhofner, G. (2008).
Model of Human Occupation: Theory and Application (4th ed.).
Lippincott Williams & Wilkins. - Kielhofner, G. (2017).
Model of Human Occupation: Theory and Application (5th ed.).
Wolters Kluwer.

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