なぜ作業療法にMOHOが必要だったのか|機能訓練だけでは足りない理由

家族向け

はじめに|OTなのに、OTらしさが分からなくなるとき

作業療法をしていると、

  • 理学療法士と同じようなことをしている気がする
  • 「作業療法らしさって何?」と聞かれて言葉に詰まる
  • 機能は良くなっているのに、生活が変わらない

そんな経験をしたことはないでしょうか。

この違和感は個人の能力不足ではなく、作業療法そのものが抱えてきた歴史的な課題です。
MOHO(人間作業モデル)は、まさにこの問題意識から生まれました。


昔の作業療法は「作業」が中心だった

作業療法の原点を振り返ると、
もともとは 作業そのものが治療手段でした。

  • 手仕事
  • 日常生活
  • 役割や社会参加

これらを通して、
人が「その人らしく生きること」を支えるのが作業療法でした。

当時の作業療法は、
「人は意味のある作業に関わることで健康を保つ」という考え方を大切にしていました。


いつから「機能」が主役になったのか

しかし、医療が発展する中で状況は変わっていきます。

  • 医学モデルの影響
  • 科学的・客観的評価の重視
  • 筋力・関節可動域・高次脳機能といった測定可能な指標

こうした流れの中で、
作業療法も 「機能訓練中心」へと傾いていきました

これは決して悪いことではありません。
機能訓練は、今も作業療法に欠かせない重要な要素です。

ただし、その結果として
「作業を見る視点」が弱くなっていったのも事実です。


機能訓練が悪いわけではない

ここで大事なのは、
MOHOは機能訓練を否定する理論ではないという点です。

MOHOが問いかけているのは、

  • なぜこの人は作業をしないのか
  • なぜ生活の中で活かされないのか
  • なぜ「できるはず」が行動につながらないのか

といった、機能だけでは説明できない部分です。

機能が改善しても生活が変わらない
このギャップを説明するために、MOHOは必要とされました。


MOHOは何を取り戻そうとしたのか

MOHO(人間作業モデル)が取り戻そうとしたのは、

「人は作業を通して生きている存在である」という視点です。

MOHOでは、人の行動を

  • 意志(何を大切にし、何をしたいか)
  • 習慣化(どんな生活リズム・役割を持っているか)
  • 遂行能力(できる力と、その体験)

という枠組みで捉えます。

これにより、
問題を「性格」や「やる気」のせいにせず、
生活や経験の流れとして理解できるようになります。


MOHOが作業療法にもたらしたもの

MOHOが広く使われるようになった理由は明確です。

  • 作業療法の専門性を説明しやすくなった
  • チーム医療の中で役割を言語化できる
  • 評価・介入・目標設定を一貫して考えられる

MOHOは、
作業療法を 「機能回復の補助」ではなく、「生活を支える専門職」として位置づけ直しました。


まとめ|MOHOは作業療法の原点を現代化した理論

MOHO(人間作業モデル)は、

  • 新しい流行の理論ではありません
  • 作業療法の原点を、現代医療の中で使える形に整理したモデルです

機能訓練が中心になりやすい今だからこそ、
「人はなぜ作業をするのか」という問いに立ち返る必要があります。

次の記事では、
MOHOの中核である 「意志」の考え方を、さらに掘り下げていきます。


※注意書き

本記事は、作業療法における一般的な理論背景を紹介することを目的としています。
個別の評価・治療・判断については、必ず担当の専門職と相談してください。


参考文献・参考資料

  1. 作業療法実践の理論
     Gary Kielhofner(著), 山田孝(監訳).医学書院.
  2. Kielhofner, G., & Burke, J. P. (1977).
     Occupational therapy after 60 years: An account of changing identity and knowledge.
     American Journal of Occupational Therapy, 31(10), 675–689.
  3. Kielhofner, G. (2008).
     Model of Human Occupation: Theory and Application (4th ed.). Lippincott Williams & Wilkins.
  4. Kielhofner, G. (2017).
     Model of Human Occupation: Theory and Application (5th ed.). Wolters Kluwer.

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