作業療法士・学生のための認知行動療法(CBT)

学生向け

こんにちは、現役作業療法士のスマティーです。

今回は、作業療法理論の1つで中範囲理論に分類される認知行動療法を紹介していきます。

この記事では、認知行動療法を 理論・評価・介入に分けて「実践につなげて」理解するできればと思います


はじめに|なぜ今、作業療法にCBTなのか

臨床現場では、

  • ストレスが強く気分が落ち込んでいる
  • 不安が強く行動が制限されている
  • 「わかっていても動けない」対象者

に出会うことが多くあります。
認知行動療法(CBT)は、こうした「生活の中の困りごと」を、考え方(認知)と行動の視点から整理し、変化を促すための実践的な理論です。

作業療法は「生活行為」を支援する専門職であり、CBTはその支援を理論的に裏づけ、再現性をもたせる武器になります。


CBTとはどんな理論か?

  • 行動療法(学習理論)
  • 認知療法(考え方の偏りへの介入)

この2つを統合した心理療法です。

CBTの基本的な考え方

出来事そのものが問題なのではなく

その出来事をどう「捉えたか(認知)」が気分・行動・身体反応に影響する

という視点を取ります。


CBTの基本モデル|5つの要素

CBTでは、人の体験を次の5つで整理します。

  1. 出来事(ストレス状況)
  2. 認知(考え・イメージ・自動思考)
  3. 気分・感情
  4. 行動
  5. 身体反応

これらは互いに影響し合い、時には悪循環をつくることがあります。


「自動思考」と「偏り」

CBTで特に重要なのが自動思考です。

自動思考とは?

出来事に直面した瞬間、反射的に浮かぶ考え・イメージのこと。

たとえば:

  • 「嫌われたかもしれない」
  • 「どうせ失敗する」
  • 「自分は役に立たない」

これらは無意識で起こり、感情や行動を強く左右します。


中核信念(スキーマ)と悪循環

面接を重ねると、さまざまな場面に共通する中核信念が見えてきます。

たとえば:

  • 「人に嫌われてはいけない」
  • 「失敗してはいけない」

この信念があると、 不安 → 回避 → 失敗体験の減少 → 信念の強化という悪循環が生じます。


CBTの評価|作業療法士が押さえたい視点

CBTの評価は「面接」が中心です。

評価で行うこと

  • いつ
  • どこで
  • 誰と
  • 何が起きたか(5W1H)

を丁寧に聞き取り、5つの要素(出来事〜行動)を一緒に整理します。

ポイント
→ 「正しいか間違いか」を判断しない(超大事!!)
→ 対象者の体験理解を最優先する


面接場面の具体例

事例設定

対象者:30代・事務職
主訴:「最近、仕事でミスが怖くて動けなくなる」


① 出来事(ストレス状況)

週明けの朝、上司から「今日中にこの資料、確認しておいて」と言われた。


② 認知(頭に浮かんだ考え)

  • 「また間違えたら評価が下がるかもしれない」
  • 「周りは自分より仕事ができている」
  • 「自分が一番足を引っ張っている気がする」

※ 本人はこの時点では、「事実」ではなく「考え」だとは気づいていない。


③ 気分・感情

  • 強い不安
  • 焦り
  • 自分への苛立ち

感情の強さ:不安 80%、焦り 70%


④ 身体反応

  • 胸が苦しくなる
  • 肩や首がこわばる
  • 手が止まる

⑤ 行動

  • 画面を見つめたまま作業が進まない
  • 周囲に相談できず、1人で抱え込む
  • 結果的に提出が遅れ、さらに落ち込む

CBT的に整理すると

この一連の流れを並べてみると、

  • 問題は「仕事ができない性格」ではなく
  • 「出来事 → 考え → 感情 → 行動」が固定化しているパターン

であることが見えてきます。

CBTでは、 この流れのどこに介入できそうか、どこなら「少し変えられそうか」を一緒に探していきます。


CBTの介入①|目標設定

CBTでは、「うまくなること」より「試せること」を目標にします。

目標設定の例(抽象的により具体的に)

  • ×抽象的:「ミスをしないようになる」
  • 〇具体的:「資料作成の前に、5分だけ内容を整理してから着手する」

このような目標は、

  • 今すぐ実行できる
  • 成功・失敗がはっきりわかる

という特徴があります。

小さな成功体験を重ねることで

対象者は、「不安があっても動ける」「自分で工夫できる」という感覚を取り戻していきます。


CBTの介入②|認知と行動に焦点を当てる

認知へのアプローチ

セラピストは、考えを否定せずにこう問いかけます。

  • 「一番足を引っ張っているという考えの根拠は何でしょう?」
  • 「もし同僚が同じ状況だったら、どう声をかけますか?」

そうです!!別の視点を“探す”ことが目的なのです。


行動へのアプローチ

行動は、負担の少ない形で設定します。

  • いきなり完璧に仕上げる → ✕
  • まず下書きを作ってから確認を依頼する → ○

行動を変えることで、「思っていたより大丈夫だった」という体験が生まれ、

認知も少しずつ変化していきます。


CBTの介入③|ホームワーク

今回の宿題

  • 作業前に浮かんだ考えを1つ書き出す
  • 作業後の気分を0〜100で評価する

目的

  • 面接室の外でも気づきを増やす
  • 感情の変化を“見える化”する

宿題は「課題」ではなく、 生活の中での小さな実験です


この事例からわかるCBTの特徴

  • 人を評価しない
  • 問題を構造で捉える
  • 生活の中で変化を確かめる

これらは、作業療法が大切にしてきた視点と非常によく重なります。


まとめ

CBTは、「考え方を変える技法」ではなく

生活の中での反応パターンを整理し、少しずつ調整していくための支援の枠組み

です。

作業療法士がCBTの視点をもつことで、対象者の「できない理由」を

責めずに、わかりやすく説明できる支援が可能になります。


引用・参考文献

・Beck, J. S.(著).(2011).認知行動療法 ― 理論と実践.岩崎学術出版社.

・Beck, A. T., Rush, A. J., Shaw, B. F., & Emery, G.(著).(2007).うつ病の認知療法.岩崎学術出版社.

・Persons, J. B.(著).(2008).認知行動療法ケースフォーミュレーション.金剛出版.

・Polatajko, H. J., Townsend, E. A.(編).(2007).作業療法実践の理論(第3版).協同医書出版社.

・Bruce, M. A., Borg, B.(著).(2014).Psychosocial Frames of Reference: Core for Occupation-Based Practice.Slack Incorporated.

・Craik, C., & Austin, C.(2015).Cognitive Behavioural Therapy in Occupational Therapy.Wiley-Blackwell.

・World Health Organization.(2017).Rehabilitation 2030: A Call for Action

・日本作業療法士協会.(2020).作業療法の定義・実践指針

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※注意書き

本記事は、作業療法における一般的な考え方を紹介することを目的としています。
個別の評価・治療・判断については、必ず担当の専門職と相談してください

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