作業科学を使った臨床推論の考え方

学生向け

こんにちは、現役作業療法士のスマティーです!
今回は、私の身体分野・精神分野・訪問リハビリなど幅広い経験から、作業科学での臨床推論を分かりやすく解説していきます。


はじめに

臨床で作業療法を行っていると、
「評価結果は揃っているのに、介入がしっくりこない」
「作業は使っているけれど、理由をうまく説明できない」
と感じることはありませんか。

それは、臨床推論が“機能中心”で止まっている可能性があります。

作業科学は、作業療法の臨床推論を

「機能 → 作業」

「作業 → 人生 → 機能」


という流れで考える視点を与えてくれます。

本記事では、
作業科学を使った臨床推論の考え方を評価・解釈・介入の流れに沿って解説します。

―「何をするか」ではなく「なぜそれをするか」から考える ―

その作業、本当に“その人らしさ”につながっていますか?


作業科学的臨床推論とは何か?

ポイントは「作業を起点に考える」こと

作業科学を用いた臨床推論の特徴は、
最初から作業に注目する点にあります。

❌ よくある推論

  • 筋力が低下している
  • 関節可動域が制限されている
  • だからこの訓練をする

⭕ 作業科学的推論

  • その人にとって意味のある作業は何か
  • なぜそれが重要なのか
  • その作業を妨げている要因は何か

これから、作業科学を使った評価・解釈・介入の流れをstep1~4に分けて解説します。


STEP① 作業を“結果”ではなく“出発点”として捉える

作業科学では、作業を
「回復したら行うもの」ではなく
「その人の人生を構成する中心要素」

として捉えます。

評価でまず考えること

  • その人は
    • どんな作業をしてきたか(過去)
    • 今、何ができて/できていないか(現在)
    • これから何をしたいか(未来)
  • その作業は
    • どんな意味をもっているか

「できる・できない」より先に「大切かどうか」を考えるのが特徴です。


STEP② 作業を3つの視点で整理する

― 意味・機能・形態 ―

作業科学では、作業を次の3要素で捉えます

① 意味(Meaning)

  • 本人にとってどんな価値があるか
  • 喜び・役割・アイデンティティとの関係

② 機能(Function)

  • その作業が生活に果たしている役割
  • 身体的・心理的・社会的な効果

③ 形態(Form)

  • いつ・どこで・誰と・どのように行うか
  • 環境・道具・時間帯など

この整理により、「作業ができない理由」が単なる機能低下ではないことが見えてきます。


STEP③ 「問題」を機能ではなく作業の文脈で解釈する

作業科学的臨床推論では、問題を次のように再定義します。

「筋力低下がある」

「大切にしている○○という作業が、
現在の身体・環境・社会的条件では行いにくくなっている」

見るべきポイント

  • 作業が行われる文脈(環境・関係性・文化)
  • 本人の作業に対する意味づけ
  • 作業が失われたことで起きている生活や役割の変化

問題は「身体」ではなく「作業とその人の関係性」として捉え直します。


STEP④ 介入は「作業の再構築」として考える

作業科学に基づく介入は、単に機能を改善することではありません。

介入で考える問い

  • この作業は別の形で行えないか?
  • 環境を変えれば可能にならないか?
  • 作業の意味を保ったまま形態を変えられないか?

作業科学を使うと臨床推論はどう変わるのか?

作業科学なし

  • 評価 → 機能
  • 介入 → 訓練
  • ゴール → 改善

作業科学あり

  • 評価 → 作業と人生
  • 介入 → 作業の再構築
  • ゴール → その人らしい生活

*作業科学なしが悪いことではありません


まとめ:作業科学は臨床推論の「軸」になる

作業科学を用いた臨床推論とは、

  • 作業を起点に
  • 人生の文脈で問題を捉え
  • 作業を再構築する思考プロセス

です。

学生にとっては、評価と介入をつなぐ思考の地図!!

臨床OTにとっては、経験を言語化し、実践に自信をもたらす理論!!

になります。

参考文献(References)

・Yerxa, E. J. (1990). An introduction to occupational science, a foundation for occupational therapy in the 21st century. Occupational Therapy in Health Care, 6(4), 1–17.

・Zemke, R., & Clark, F. (Eds.). (1996). Occupational science: The evolving discipline. Philadelphia: F. A. Davis.

・Clark, F., Parham, D., Carlson, M. E., Frank, G., Jackson, J., Pierce, D., … Zemke, R. (1991). Occupational science: Academic innovation in the service of occupational therapy’s future. American Journal of Occupational Therapy, 45(4), 300–310.

・Pierce, D. (2014). Occupation by design: Building therapeutic power. Philadelphia: F. A. Davis.

・Townsend, E. A., & Polatajko, H. J. (2007). Enabling occupation II: Advancing an occupational therapy vision for health, well-being, & justice through occupation. Ottawa: CAOT Publications ACE.

・Christiansen, C. H., Baum, C. M., & Bass-Haugen, J. (2005). Occupational therapy: Performance, participation, and well-being (3rd ed.). Thorofare, NJ: Slack Incorporated.

・日本作業療法士協会(監). 『作業療法白書』 日本作業療法士協会.

・坂本 龍太・他. 作業科学の概念と作業療法への応用. 作業療法, 日本作業療法士協会誌.

・西野 歩(編). 『作業療法理論の基礎と実践』医歯薬出版.

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※注意書き

本記事は、作業療法における一般的な考え方を紹介することを目的としています。
個別の評価・治療・判断については、必ず担当の専門職と相談してください

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