作業療法の歴史と理論― なぜ、私たちは「理論」を学ぶのか ―

療法士向け

はじめまして、スマティーです。
今回は作業療法の歴史と、理論がなぜ必要なのかについてまとめました。

  • 新人で、作業療法の勉強を何から始めればいいかわからない
  • 作業療法士として働いているけれど、専門性に自信がもてない
  • 理学療法との違いを、うまく説明できない

そんな方に向けて、「最初の一歩」として読んでいただけたら嬉しいです。


昔と今で、作業療法は何が違うのか?

まずは理論の前に、作業療法の歴史から見ていきましょう。

作業療法が生まれる前の背景

  • 道徳療法(18〜19世紀)
  • プラグマティズム(19世紀〜20世紀初頭)
  • アーツ&クラフト運動(19世紀〜20世紀初頭)

「人は意味ある活動を通して回復する」という考え方は、すでにこの時代から存在していました。


作業療法の歴史的パラダイム

① 作業パラダイム(1900年代〜1940年代)

上記3つの思想を統合したものが、初期の作業療法=作業パラダイムです。

  • 作業そのものが治療
  • 生活全体を重視
  • クライアント中心

この時代の作業療法は、今よりもずっと「生活」に近いものでした。


② 機械論パラダイム(1960年代)

その後、医学界から
「経験だけでなく、科学的・医学的に説明できる理論が必要だ」
と言われるようになります。

ここで登場したのが機械論パラダイム(医学モデル)です。

  • 人間をシステム(神経・筋・骨格など)として捉える
  • 障害は「部品の故障」として理解する
  • 疾患別アプローチの確立

ネガティブに見られがちですが、疾患別作業療法が生まれた重要な時代でもあります。


③ 作業行動パラダイム(1980年代〜)

しかし次第に、こんな疑問が生まれます。

「作業療法って、理学療法と同じことをしていない?」
「それならOTじゃなくてもいいのでは?」

そこで再び注目されたのが、人間と作業を“全体”として捉える視点です。

  • 全体は部分の総和以上
  • 作業・人・環境を一体として見る

これが作業行動パラダイムです。

※今、医学モデルに基づいた実践をしているからといって、それが悪いわけではありません。


なぜ、理論の前に歴史を知る必要があるのか

それは、今ある理論はすべて、歴史の積み重ねの結果だからです。

  • 何に違和感があったのか
  • 何を取り戻そうとしたのか
  • どんな限界があったのか

それを知ることで、理論は「暗記」ではなく「意味のある道具」になります。


そもそも「理論」って何?

作業療法の理論は、大きく5つに分けられます。

  • 超メタ理論
  • メタ理論
  • 大範囲理論
  • 中範囲理論
  • 小範囲理論

細かい説明は別の記事に譲りますが、
大切なのはレベルの違う“考え方の枠組み”があるということです。


作業療法理論は「迷う自分」を助けるためにある

現場で、こんなことを感じたことはありませんか?

  • 「今日の訓練、これでよかったのかな…」
  • 「頑張っているのに、何か噛み合わない」
  • 「先輩の真似はできるけど、説明はできない」

それは、あなたの力不足ではありません。考えるための枠組みが、まだ揃っていないだけです。


理論は「正解」を教えるものではない

はっきり言います。

理論は、必ずうまくいく魔法ではありません。

理論がしてくれるのは、

  • なぜ迷っているのかを言語化する
  • どこに注目すればいいかを示す
  • 選択肢を増やす

という「思考の補助線」です。


経験だけの作業療法が抱える怖さ

「現場は理論じゃなくて経験だ」
この言葉が正しい場面もあります。

でも、経験だけに頼ると…

  • うまくいった理由がわからない
  • 別の人に同じことをして失敗する
  • 自分の支援を説明できない

という状態に陥りやすくなります。

私は、理論は経験を“再現可能な知恵”に変える翻訳装置だと考えています。


理論があると、見える世界が変わる

  • 「やる気がない人」
     → 環境とのズレが起きている人
  • 「不器用な人」
     → 作業と能力の要求水準が合っていない人
  • 「関わりにくい人」
     → 過去の経験が防衛反応を生んでいる人

理論は、人をラベルで見る視点から、自分の考えに気づく視点へ導いてくれます。


理論は「責任」を引き受けるためのもの

作業療法士は、対象者の生活に介入する仕事です。

だからこそ、「なぜこの支援をするのか」を問い続ける責任があります。

  • 理論がない支援 → その場しのぎ
  • 理論がある支援 → 修正できる支援

結果が思うように出なくても、次につながる根拠を残せるのが理論です。


理論は、あなたを縛らない

「理論に当てはめると自由がなくなる」
そう感じる人も多いかもしれません。

でも実際は逆です。

  • 崩していい部分
  • 変えてはいけない軸

を区別できるからこそ、
その人に合わせて自由に考えられるようになります。


理論は、あなたを一人にしない

理論があると、

  • 同じ言葉で語れる
  • 同じ枠組みで共有できる
  • 個人の感覚ではなく、専門職として考えられる

作業療法理論は、
あなたを優秀に見せるためではなく、孤独にしないために存在しています。


まとめ

作業療法理論は、偉い人のための知識でも、試験のための暗記でもありません。

  • 現場で迷う人
  • もっとよい関わりをしたい人
  • 自分の作業療法に納得したい人

そんな人のための、思考の支えです。

もし今、「なんとなくうまくいかない」そう感じているなら、それは成長の入り口。
理論は、その一歩先で、静かにあなたを待っています。

参考文献

  • World Federation of Occupational Therapists. (2012). Definition of Occupational Therapy.
  • Townsend, E., & Polatajko, H. (2013). Enabling Occupation II.
  • Creek, J. (2010). The Core Concepts of Occupational Therapy.

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※注意書き

本記事は、作業療法における一般的な考え方を紹介することを目的としています。
個別の評価・治療・判断については、必ず担当の専門職と相談してください

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