はじめに|「意欲がないですね」で終わらせていない?
臨床で、こんな会話をしたことはないでしょうか。
確かに、作業に取り組まない様子を見ると
「意欲が低い」と表現したくなる場面は多くあります。
でも、その一言で片づけてしまうと、
その人がなぜ行動できないのかは見えなくなってしまいます。
MOHO(人間作業モデル)では、
この「意欲」という言葉を、もっと丁寧に分解して考えます。
MOHOでいう「意志」は、やる気ではない
MOHOにおける「意志(Volition)」は、
単なるモチベーションや気合いのことではありません。
MOHOでは、意志を次のように捉えます。
人が「行動しよう」と思うまでの、考えや感情のまとまり
つまり、
行動の手前にある内側のプロセスが意志です。
意志を構成する3つの視点
MOHOでは、意志を次の3つの要素から考えます。
① 価値|それは、その人にとって大事か
その作業は、
たとえば、
その価値と結びつかない作業は、
どれだけ「必要」と説明されても、行動につながりにくくなります。
② 興味|やってみたいと思えるか
興味は、
と深く関係しています。
臨床でよくあるのが、
「リハビリは嫌い。でも〇〇ならやる」
という場面です。
これはワガママではなく、
興味の方向が違うだけかもしれません。
③ できそう感|自分にもできると思えるか
これが、臨床で特に重要な視点です。
こうした経験があると、
「どうせできない」という感覚が強くなります。
その状態でいくら励ましても、
行動にはつながりません。
臨床あるある①|「意欲がない」の正体
たとえば、
このときMOHOでは、
「意欲がない」と結論づける前に、こう考えます。
意志を分解して見ることで、
関わり方の選択肢が増えます。
臨床あるある②|声かけが逆効果になる理由
「頑張りましょう」
「やればできますよ」
この声かけで、
かえって反応が悪くなることもあります。
それは、
本人の中では「できない経験」が積み重なっているからです。
MOHOの視点では、
- 行動を促す前に
- 意志の回復が必要な段階
と考えることがあります。
意志は「変えられないもの」ではない
ここで大事なのは、
意志は固定された性格特性ではないという点です。
MOHOでは、
これらの積み重ねによって、
意志は変化すると考えます。
「やる気を出させる」のではなく、
「やってみようと思える状況を整える」。
それが、MOHOにおける意志への関わり方です。
まとめ|「意欲が低い」で終わらせない
MOHO(人間作業モデル)で意志を見ると、
- 行動しない理由を
- 人の内面や性格の問題にしなくて済む
ようになります。
「意欲が低い」という言葉の奥にある、価値・興味・できそう感。
それを丁寧に見ることが、作業療法らしい関わりにつながります。
次の記事では、
「習慣化」という視点から、
「続かない理由」を考えていきます。
※注意書き
本記事は、作業療法における一般的な理論的考え方を紹介することを目的としています。
個別の評価・治療・判断については、必ず担当の専門職と相談してください。
参考文献・参考資料
- 作業療法実践の理論
Gary Kielhofner(著), 山田孝(監訳).医学書院. - Kielhofner, G. (2008).
Model of Human Occupation: Theory and Application (4th ed.).
Lippincott Williams & Wilkins. - Kielhofner, G. (2017).
Model of Human Occupation: Theory and Application (5th ed.).
Wolters Kluwer.

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