「できるのにできない」理由|MOHOで考える作業療法の「遂行能力」

学生向け

はじめに|評価ではできているのに…

臨床で、こんな場面はありませんか。

  • 評価場面ではできている
  • 機能的にも問題は少ない
  • でも、実際の生活ではやらない・できない

つい
「意欲の問題かな」
「もっと練習が必要かな」
と考えてしまいがちです。

MOHO(人間作業モデル)では、
このズレを 「遂行能力(Performance Capacity)」 の視点から捉え直します。


MOHOでいう「遂行能力」とは何か

MOHOにおける遂行能力は、
単なる身体機能や認知機能のことではありません。

MOHOでは、遂行能力を次の2つの側面で考えます。

  • 客観的な能力
     筋力・関節可動域・認知機能など
  • 主観的な遂行体験
     「自分はできている」「うまくいった」という感覚

この 主観的な体験 を含めている点が、
MOHOの大きな特徴です。


「できる」と「できると思える」は別もの

臨床でよくあるのが、次の状態です。

  • 機能的にはできる
  • でも本人は「できない」と感じている

この場合、
行動は起こりにくくなります

なぜなら、人は
「できそうだ」と感じる行動しか選ばないからです。

MOHOでは、
この「できそう感」を遂行能力の重要な要素と考えます。


主観的な遂行体験が失われる理由

病気や障害によって、次のような経験が重なると、

  • 失敗体験が増える
  • 他者に手を出される
  • 「危ないからやらないで」と止められる

「自分でやる感覚」 が薄れていきます。

結果として、

  • 任せられると不安
  • できるはずでも避ける
  • 何もしない方を選ぶ

という行動につながることがあります。


臨床あるある①|手伝いすぎ問題

家族やスタッフが、

  • 先回りして介助する
  • 時間短縮のために代行する

こうした関わりが続くと、
本人は 遂行体験を積む機会 を失います。

MOHOの視点では、

遂行能力が低いのではなく、遂行体験が不足している

と考えます。


臨床あるある②|評価と生活のギャップ

評価室では、

  • 静か
  • 指示が明確
  • 環境が整っている

一方、生活場面では、

  • 物が多い
  • 時間に追われる
  • 他者との関係が絡む

この違いによって、
遂行の難しさが一気に上がることがあります。

MOHOでは、
遂行能力は 環境との相互作用 の中で現れると考えます。


遂行能力は「使われて育つ」

MOHOでは、遂行能力を
固定された能力 とは捉えません。

  • 少し難しい課題
  • でも達成できた体験
  • 「自分でできた」という実感

こうした経験の積み重ねが、
遂行能力を高めていきます。

つまり、

遂行能力は、作業を通して育つ

という考え方です。


作業療法士ができる視点の転換

遂行能力を見るとき、
MOHOは次の問いを促します。

  • どこでつまずいているのか
  • 何が不安なのか
  • どんな環境ならできそうか

「できるか・できないか」ではなく、
「どうすればできる体験を作れるか」

この視点が、
作業療法らしい関わりにつながります。


まとめ|遂行能力は経験の積み重ね

MOHO(人間作業モデル)で遂行能力を見ると、

行動しない理由を能力不足だけで説明しなくて済む

ようになります。

遂行能力とは、
機能 × 環境 × 主観的体験 の重なりです。

次の記事では、
MOHOの視点を使って
「意欲低下・うつ」 をどう捉えるかを考えていきます。


※注意書き

本記事は、作業療法における一般的な理論的考え方を紹介することを目的としています。
個別の評価・治療・判断については、必ず担当の専門職と相談してください。


参考文献・参考資料

  1. 作業療法実践の理論
     Gary Kielhofner(著), 山田孝(監訳).医学書院.
  2. Kielhofner, G. (2008).
     Model of Human Occupation: Theory and Application (4th ed.).
     Lippincott Williams & Wilkins.
  3. Kielhofner, G. (2017).
     Model of Human Occupation: Theory and Application (5th ed.).
     Wolters Kluwer.

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